第2回定例議会 代表質問 要旨
平成12年7月5日(水)

介護保険制度について

(荒木ひでき区議)

 介護保険がスタートする以前から、区の高齢者福祉サービスを受けていた75歳の一人暮しの女性の事例を基に、質問致します。
 その方は、昨年10月の介護保険の要介護認定結果では要介護度3でした。その時点では、トイレまでは歩け、食事もなんとか一人で食べることが出来たものの、それ以外の行動は自分1人で出来ない為、区の福祉サービスで週3回のヘルパー派遣の他、自費で4日間のヘルパーを頼んでいました。今年の始め、体調を崩し、全くの寝たきり状態になり、トイレも食事も一人で出来なくなってしまいました。そこで、保健福祉センターに相談をしたところ、今年2月に、区の高齢者福祉サービス内でこの方のサポートプランを作り直してもらうことができ、高齢者の身体的、経済的状況の変化に則した大田区の対応に大変感激していました。
 わが大田区は、保健福祉センターを通じて、高齢者の身体や家計の困難度に応じ、その人に合った福祉サービスを行ってきました。この4月からは介護保険制度が施行され、在宅支援も介護保険のサービスに移行されました。この高齢者も、たとえ1割の本人負担があるとしても、今までと同じサービスが受けられると信じていたそうです。しかしこの方に対しては、先に述べた認定審査以降の身体的困難は一切考慮されないまま、週3回のヘルパー派遣だけが、介護保険サービス内で行われているのが現状で、大変不安な毎日を過ごしておられました。
 大田区では平成6年3月に地域福祉計画を制定し、他に先駆け、障害者、高齢者に対して積極的に取り組む区の姿勢は、大田区議会議員として、大いに誇りとするところであります。
 さて、私は、4月1日の施行以後、どのように我が大田区の地域福祉サービスが変わったのか、変更により、区民の方からどのような苦情や疑問が寄せられているのか調べてみました。その結果を対応種別ごとに見てみますと、相談が160件、問合せが331件、苦情が20件、その他5件 計516件あり、苦情の主な事例は、

  • 年金のみで生活しているのに、保険料を天引きされると生活が苦しい。
  • 訪問介護自己負担減額の特別対策は、既受給者のみを対象としており、不平等である。
  • 65歳未満で特殊疾病以外はサービスを受けられないのに、なぜ保険料を支払う必要があるのか。
  • 要介護認定が知人に比べて低い。
  • 要介護認定区分変更申請を行ったが、前回と同じ判定だった。
  • 要介護3の判定を受けたが、限度額超過で数万円の自己負担がある。
  • ケアマネージャーが通院送迎介助のヘルパー派遣についてきちんと調整してくれない。
  • 契約したケアマネージャーが忙しくて、ケアプランをなかなか作成してくれない。
  • 身体障害者で入院しているが、介護保険施設になって、自己負担額が増えた。
  • 療養型病床群に入所しているが、諸雑費が高額で不明朗である。
  • 病院が介護保険施設に指定されたが、自己負担が高額のままである。
等があります。


【質問(荒木ひでき区議)と答弁(西野区長)】

Q.これらの苦情に対して、どう考えるか。
A.平成11年度から問合わせダイアルを設置している。その苦情は3つくらいに分けられる。

  • 制度自体が十分理解されていない → 制度を理解してもらう。事業者と利用者間の調整をやらざるを得ない。
  • 事業者そのものに原因がある→ 区として事業者に改善を要請している
  • 改善されず、事業者指導も徹底されていない→ 苦情処理機関である都、国保連などの機関につなげていく
 このような形で解決させて頂いている。創設して間もないので、多少時間がかかるかなという印象はある。オンブズマンについては、現段階で、完全勧告という要請はゼロである。

Q.10月からはじまる保険料徴収の準備作業の進捗状況はどうなっているのか。収納率の向上に向けて、どのように取組むのか。
A.65歳以上の第1号被保険者は約10万7000人で、このうち、年金から直接差し引かれる方は82%相当として約8万7000人。従って、保険料徴収すべき事務の対象者は約2万人。こういう考え方で事務作業を進めている。9月末に納入通知書等の発送を予定しながら、準備作業に入っている。できるだけ、振替口座などを活用頂くよう、勧奨もあわせてしていく。納期限後の未納者には、国民健康保険徴収嘱託員を活用していく。
Q.要介護認定で非該当になった人たちの、区として何らかの救済措置をお考えかどうか。
A.1. 高齢者生活支援ヘルパーの創設 2. 日常生活用具の支給 3. 高齢者住宅改修助成 4. 車椅子の貸出 5. 在宅サービスセンターでの「生きがい通所事業」の創設   6. 特別養護老人ホームでの「シルバーステイ」などの事業を用意している。

Q.必要な人に必要なサービスが、滞りなく給付されているのか。
A.当初、サービス提供の遅れが懸念されたが、順調に出発できたといえる。
Q.区として給付面で、低所得者等利用者の一時的な負担増に対して、何か制度的に工夫をしていることはあるのか。
A.高額介護サービス費の支給の問題、あるいは失業等に対応した利用料の減免制度などを念頭においている。区の独自事業としては、貸付制度の導入などを行った。
Q.「介護保険事業計画の計画期間は5年とし、3年ごとに見直しを行う」とあるが、現時点で介護保険課として、見直すべき点はあるか。
A.正確な介護サービス提供が行われているかどうかは、今しばらく時間を頂戴して分析していきたい。また、「介護保険推進協議会」公募の委員などを含め設置しながら、そこでの意見要望などを参考に、見直すべき課題を整理していきたい。



高齢者問題について

(荒木ひでき区議)

 平成12年2月23日の第一回定例会、区長挨拶の中で 「「安心して生活出来る街づくり」として、在宅介護支援センター運営委託は、要介護高齢者から虚弱な高齢者までを含む高齢者の相談窓口を開き、区職員の在宅サービスチームと同様に出前型で、保健・福祉・医療が一体となった総合的なサービスの提供を進めます。・・・さらに、自立と判定された虚弱な高齢者を中心に、寝たきりにさせないための支援方法を検討し、支援計画の作成、サービスの提供を行って参ります。いきがい通所訓練事業として、自立と認定された高齢者を対象に、高齢者在宅サービスセンターで老化予防のための事業を実施して参ります」とありますが、まさに高齢者問題はこのことに尽きると思います。高齢者問題とは施策政策として「寝たきり高齢者を作らない、作らせない。寝ている高齢者には何とか起き上がって頂く」というのが私の信念であり、このことに対する対応が、行政としての最大の課題であると思っています。



【質問(荒木ひでき区議)と答弁(西野区長)】

Q.第一回定例会の区長挨拶にある「寝たきり」にさせない為の支援方法の具体例を。
A.16ヶ所の標準型在宅介護支援センターで、これらの人々を対象にしたそれぞれの支援計画を作成し、閉じこもり予防などを図っていく。この考え方に基づく具体化を進めている。
Q.「老人いこいの家」のニックネームを「ゆうゆうクラブ」と名づけるなど、努力はされているようですが、区民にわかりやすく馴染み易いPR方法について、どう考えているか。
A.こういうものを前面に出し、機会あるごとに、虚弱なお年寄りの方々も含めて気軽に利用される施設にしていきたいと考えている。
Q.怪我をしてから膏薬を貼るのではなく、いかに元気がイチバン !!怪我をしないようにするのか、即ち「高齢者が元気に生きるには」という施策政策が、介護保 険に対する最大のアンチテーゼとなると思うが、区の考えを教えて下さい。
A.病気や障害の発生予防や早期発見を目指し、施策を展開していくことが大切であると考える。そういう意味では、生活習慣病、痴呆、寝たきり、閉じこもり予防等には、自主グループによる機能訓練を積極的に生きがい対策として取組む必要がある。健康は自分で守るという意識で、地域の皆さんとともに取組んでいただく。この辺に施策の重点をおきたい。



障害児問題について

(荒木ひでき区議)

ここで、あるお母さんが区長へ出された手紙の一部を、紹介させて頂きます。「この春から、養護学校の2年生になる娘は、Rett(レット)症候群という先天性の障害(疾病による四肢体幹機能障害)です。生後6ヶ月の時に発病し、そのため歩行は出来ず、食事、排泄等は全介助です。但し、状態は安定しておりますので、医療行為は必要ありません。
 就学後、娘が学童保育に入れば、継続的に勤務が出来るので、昨年娘が1年生になるにあたって、学童保育を申請したものの、不承認でした。この1年、ヘルパー制度を利用して頑張ってきたものの週2〜3日程度しか働けず、自己負担も多く、私は「娘と共に自立した生活をしたい」「娘を健常児との関わりの中で、特に、地域の中で、育てたい」と強く願い、新たに12年度学童保育申請を行うに至りました。自立した生活となると経済的自立が基本です。娘が学童保育に入ることが出来れば、フルタイムで働き自立したいと思っています。・・・私達が自立した生活を送るためにも、学童保育に入ることを希望しています」
 以上が手紙の内容であります(途中略あり)。私なりにこの件を調べてみて、これはこの母娘個人の問題としてだけでなく、障害児に対する大田区の全体的な「姿勢」の問題として考えて頂きたいと思います。
 この方は、「利用しようとする児童が疾病その他の事由により、集団生活に適さないと認められる時」という理由で、学童保育申請を2度、不承認されました。障害者児童を抱え自立しようとしている母親に対して、区としてとった方針に私は大きな疑問を感じます。大田区でも確かに障害児の保育はなされています。しかしそれは、あくまでも軽い障害であって、一定以上の障害を持つ場合、要するに集団生活に適さない場合は預かってもらえない。つまり区が自立する道を閉ざしているということです。私が調べた中野区、目黒区では、重度の障害児も受け入れていますが、その審査に当たっては「どうしたらこの子を受け入れることが出来るだろうか」という観点から議論が始まり、待機児童を作らないためにはどうすれば良いかと考えるそうです。どちらの区の対応も何も特別なことをしているとは思いません。単に区としての姿勢であり、積極的に受け入れをしていこうとするか、しないかの問題です。
 そして、それは大田区でも出来ないことではありませんし、現に問題は異なりますが、私が去年の予算特別委員会で質問した筋萎縮症の三兄弟の件では、制度の狭間にある障害児にいかに対応していくか、区長以下、保健福祉部のご努力で心温まる十分な対応がなされました。これはまさに福祉大田区の大きな前進であったと私は考えます。  議会で問題になってはじめて「どうしたらよいか」を考えるのではなく、困って窓口に来たら、柔軟な組織対応で誰にでも同じように対応しなければならないと思います。そこであえて申し述べさせて頂けば、職員一人一人に常に問題意識をもって頂きたい。相手の立場に立って物事を考え対処して頂きたいと思います。それが「行政」というものではないのでしょうか。



【質問(荒木ひでき区議)と答弁(西野区長、児童部長)】

Q.自立して、何とか手を取り合って、生き抜いていこうとしているこの母娘に対し、区として、学童保育という援助の手を差し伸べることが出来ないとしたら、この母娘が大田区で生きていくためには、一体どうすれば良いのか、お答え頂きたい。
A.(西野区長)基本姿勢をどこに置くか、この部分について、その方の状況に合わせた解決策を常に求める。こういう姿勢については、私も、同じ姿勢で臨みたいと思っております。
A.(児童部長)障害を持ったお子さんの学童保育室の入室については配慮してきておりますが、ご指摘頂いたお子さんのように歩行ができない、食事、排泄が全介助という状況では、児童館などにおける学童保育としてお預かりすることには限界があり、困難である。心身障害児の介護等のサービスを必要としている家庭に対しては、ホームヘルプの派遣事業もあるので、保健福祉センター等でヘルパーをつけることなどを、ご相談頂きたいと思う。
Q.他区の事例を踏まえ、大田区行政としての問題解決に向けた意欲をお聞かせ下さい。
A.(児童部長)大田区としては、障害をお持ちのお子さんの学童保育入室については、個々の障害の状況に応じて判断をしていかざるを得ないと考えている。現状でも、障害児受入に関する要領の文言を狭く解釈することなく、学童保育として受入れ、責任を持って預かれることができるかどうか、個別ケースに即して判断をさせて頂いている。
Q.この問題に限らず、「縦割り」ではない、全庁的な横のつながりをもって、問題の解決が図られるような体制を整えるべきではないか。
A.(児童部長)個々の制度の判断は、それぞれのところで判断をせざるを得ないと考えていますが、情報提供など努力すべきところはあると思っている。



防災問題について

(荒木ひでき区議)

 私がこの項の質問を考えていた6月26日夜、突然、「三宅島噴火の危険性あり」というニュースが飛び込んできました。三宅島で起こったことをいかに大田区の防災に活かすのかという観点から、質問させて頂きます。
今、私が、大田区の防災として一番気になる点は、住民避難と避難所、そして、災害弱者の問題であります。
 三宅島での避難や避難所生活が比較的スムーズに進んだのは、「隣近所の助け合い」という連帯意識が強かったからといえます。「顔見知りの人ばかりだから噴火は怖いけど安心だ」という声が圧倒的であり、大田区でも地域で支え合うということを柱にした、避難所ごとの防災意識の向上、人間関係の向上を目指した防災訓練等を、徹底していかなければならないのではないでしょうか。また、地域の実情に合わない町会の組み合わせとか、普段の区民活動の原点である特別出張所単位からずれた一部町会の組み合わせ等を、小さいようで大きな問題として早急に考えなければならないと思います。
 高齢化の進展で、お年寄りは決して少数派ではなくなりましたが、三宅島の避難所で問題になったことは、乾パンが固くてお年寄りには食べられなかった、ということです。これは切実な問題です。大田区ではアルファ化米、レトルト食品の導入等、他区に先駆けて大変な努力がされているようですが、より一層の充実をお願い致します。
 また、島内唯一の特別養護老人ホーム「あじさいの里」での寝たきり3人を含む入居者53人の避難は、毎月の防災訓練を重ね、職員も入所者も避難の心得を体で覚えてきたことが生かされ、噴火の可能性を知らせるテレビのニュース速報から、わずか2時間で終えたとあります。



【質問(荒木ひでき区議)と答弁(西野区長)】

Q.6月27日、都災害対策本部が、湾岸に隣接する6つの区に協力要請をしました。新聞報道によると、港区や中央区などでは600人前後の受入れを想定し、臨機応変に対応出来るようにしたいとする一方で、我が大田区だけは、「現在、防災課で打ち合わせ中」と書いてあった。一体、どのような打ち合わせをしていたのか。
A.6月26日三宅島噴火、そして27日の午後、防災課長から直接、東京都の災害対策本部から避難の受入要請がありました、との連絡を受けた。その時、大島の噴火の際に受入れた体験があるので、同様な対応を前提に、650人位を受入れる方向で返事をしなさいと指示をした。どことどこが施設として活用できるのか、その時にどういう資材を整えなければならないのか、そういう打合せをしていたと思われる。650人ということが抜きにして、ただの打合せ中ということが新聞記事になったと思われる。具体的数字も踏まえて、大島と同種の受入れ体制を組む という話で、防災課長とは話をしていた。
Q.大田区防災課は、早急に現地視察すべきだと思うが。
A.東京の各市区町村が同時に現地視察に行ったら向こうが混乱してしまう。現地視察をどうしてもしなければならない案件と、そうではない案件と、判断しながら対処する。避難民の受入だけなら現地視察は必要ないと、防災課長に指示している。連絡は、都の災害対策本部から時期を追って適切に情報を流してくる。それにどのように対応するかという体制で、緊急のときは足りると考えている。
Q.平成12年度の大田区防災訓練は、三宅島の教訓をどのように取り入れて行うのか。
A.3年程前から発生地で防災訓練をやろうと、消防とか警察とか区役所が大掛かりな器材を持ち込んできて見本的な行動を各機関が行うというやり方ではなくて、住民が主体となって、今発災したことに対してどう対応するか、そういう訓練にしようという方向に切り替えている。現場型の訓練、自分の身体、財産は自分で守るという、そういうところにベースをおいた防災訓練をやらせて頂いている。住民に参加して頂く綜合防災訓練は、そこに住んでいる、あるいは働いている人たちを主人公にした防災訓練にしたい。平成12年度もそのような取組みで行います。学校などの避難所に集まったときに、むしろ、避難してきた人たちが自主的に避難の設備を持ち出してどのように生活を組み立てていくか、即対応する訓練をどのように行うか、地域の皆さんと相談しながら、計画を立てております。
Q.現在の災害弱者に対する取組みについて、お話し下さい。
A.必ずしもうまく動いておりません。モデル地区は何ヶ所か指定しました。プライバシーを守るということで手上げ方式という形で取組ませて頂いており、このモデル地区の拡大という方向を目指している。
Q.区内8ヶ所、840人入所の特別養護老人ホームの防災対策は、どのようになっているか。
A.各地域との連携の元に、防災協定を結んで救助活動を行って頂ける。ただ、新設の多摩川は、その話合いをしている最中である。
Q.三宅島の避難所では、私の考えもしなかった「蚊取り線香」「冷房器具」等が大変な話題になっていましたが、大田区の災害備蓄品の検討等はいかになされているか。
A.保存期間を含めて、何が必要か、十二分に検討したいと思います。
Q.大田区学校避難所運営協議会の進展具合は。
A.マニュアルを作って、それを地域に示しながら協力を要請している。

 また、昨日(7月4日)は「記録的短時間大雨情報」が発令され、明治以来、はじめて都内で1時間に82.5mmの大雨が降りました。大田区の情報が気になったので午後7時30分頃、区役所に電話をしたところ、しっかりと防災課につなが りました。
 午後6時20分に「水防指揮本部」を設置し、管内を4班に分け、既に巡回をしておられました。万全の備えです。私も1大田区民として、大変頼もしく感じられた次第です。関係部局の皆様、ご苦労様でした。時節柄、これからも頑張ってくだ さい。伊豆諸島の1日も早い沈静化を祈りつつ、又、21世紀に向けて大田区の益々の大発展を祈りつつ、私の代表質問を終わらせて頂きます。

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