第4回定例議会 一般質問 要旨
平成12年11月30日(木)

 質問通告に基づき質問をさせていただきます。今回は、商業振興の話しをさせていただきます。まず皆様に大田区の中小の商店街の気分というものを知っていただく為に、私自身の話をさせていただきます。私は、大森柳本通り商店街の菓子屋に生まれ、子供の頃の思い出はすべてお客様でいっぱいの商店街の風景と重なりあいます。小学校高学年の頃から強制的に店の手伝いをさせられ「いらっしゃいませ」の発声から、袋詰のしかたまで嫌々覚えたものです。春の桜餅から始まって、おはぎ 柏餅 クリスマスケーキと、季節の商品は店売だけではいくら頑張っても売り上げが伸びないので、目標個数を設定し、外に売りに行かされました。最初は嫌々でしたが、そのうち自分なりにどうしたら売れるのかを考えるようになり注文伝票をガリ板を自分で作り、商品説明も付けるようになり、目標個数等、楽々とクリア出来るようになりました。つまり、私なりの流通ルートを確立したわけです。うまく文章には出来ませんが後で解った事は、元気とやる気と必死さの集合体であった当時の商店街の人達、即ち私の親達が言葉ではなく体ごと私達に「商売」と、そして「何事か」を、教えてくれたように思います。注文伝票の作り方を教えてくれた、乾物屋のおじさん。ガリ板の使い方を教えてくれたのは文房具屋のおばさん。注文取りが恥ずかしくてどうしても訪ねた家の中に一歩踏み出せなかった時「家に入る前に何も考えるな!入ってから何を喋るか考えろ!」と、アドバイスをしてくれた自動車屋のおじさん これは今でも、私の議員活動の原点です。このように私は、「まち」に「商店街」に育てて頂きました。私の子供の頃からの友人達も温度差は有るにしても同じです。

 そして、今「平成十一年度」の中小企業庁の「まちづくりと、商業活性化に関する意識調査」によると個店の五割が五年先の商店街の見通しについて「縮小衰退する」と考え四割が「現状維持」商店街の空洞化や衰退はもはやギリギリの限界点まで来ています。又、平成十一年度「大田区商業振興対策委員会報告書」によれば、本年五月に発表された都の平成十一年商業統計調査によれば、区内における小売業商店の年間販売額は約六千二百九十億円で、平成三年の約六千九百二十億円をピークに減少が続いてる。同調査では、最近の景況についても82.6%の商店街が“衰退している”と、区内商業の分析をしています。商業振興は、個店の努力が大前提で、商業紙で元気な商店会の理事長が売れない個店や商店街に対して「商店主はお客や景気のせいにしてますが本当は、自分の質が落ちているんです。それに、まったく気が付いていない。そんな店に後継者が育たないのは当たり前。個店や商店街が構造不況から脱するには、まずこうした点から改善すべきです。」と苦言を呈しておられました。この部分は質問項目に入れさせて頂きましたが、まさに真理であり行政が効果的に何を成すべきか、または何が出来るのかが大きな課題であると思います。

 私の地元の商店街でも、店売だけに頼らずに積極的に注文取りに励み、東京近郊も含め何処でも夫婦で、配達をしまくっている元気な花屋さん。頑固な手仕事にこだわり、納得がいかないとお客様相手でも喧嘩を始めたりするが、神戸の大震災の九日目「お前だけ行かせるのは心配だ」と、一緒に義援金を届に神戸まで行ってくれた心優しい洗濯屋の頑固オヤジ。地域の「紀伊国屋」を目指すスーパーの店主。おにぎりに拘り、ついに「揚げおにぎり」が、雑誌にまで紹介された和菓子屋さん。消防団に身体を張って、家族が全員で商売を盛り上げている食堂の店主。常に冷静で品揃えに気を使い、町の行事などでは時々 ビックリするような、指摘をしてくれる時計貴金属屋さん。などなど、どこの商店街でも同じだと思いますが個性的で元気な人のお店は光っています。この方々は、町会の消火隊の隊員であり 交通部長であり 消防団の副分団長であり 町会の副会長であり それぞれ町会自治会の運営上なくてはならない人達です。この人達を除いた町会運営、地域の発展は考えられません。この方々達でさえ、後継者問題など将来の不安は切実です。

 商店街の衰退は大田区行政の基盤である地域の自治会運営にも重大な障害になっていきます。五年、十年後の大田区はいったいどうなって行くのか心配です。即ち、商店街は街の核であり触れ合いの場として、重要な役割を果たしてきました。商店街は個人商店だけのものではない、少子高齢社会がより進展する中で、地域において子供や高齢者を支えていく、地域を見守る目としての役割も持っています。地域社会の文化の創造、継承の場としての役割も大きいのです。しかし、こんな世の中にあっても元気な商店街は、確実に存在するのです。東京都産業振興ビジョンを参考に、取材を行ない直接目で確かめた中から特に印象に残った都内三商店街を例に出し、これらの商店街がどお頑張ったのか 行政はどのように関わったのかを、申しのべさせて頂きます。

(1)江東区砂町銀座商店街(新陳代謝でお客を呼び込む)

 下手をすれば陸の孤島にもなりかねない立地だが、近隣型商店街の中で今最も元気があるといわれている商店街です。平日の来客数は平均二万人、週末はその数倍にもなる。一直線に伸びる通りは六百七十メートルに及ぶが、道幅は狭い。「七夕祭りは三日間で二十五万人が訪れるほど個性的なイベントがマスコミを引きつけ、数年前のNHKの全国放送で一気に知名度が上がり、メジャー商店街に仲間入りした。今では「月に一度くらいは商店街の模様がテレビ放映される」ほど。「商店街には一八六店舗あって、そのうちの三分の一が食品関係。生鮮三品でいうと、それぞれ七、八店舗ずつは競合している。それぞれが人件費を抑えたり、仕入れに工夫しながら常に競争しています。行政としての取り組みはイベント助成等で、特に目立つ事はありません。

(2) 足立区・東和銀座商店街(商店街と福祉施設の連帯による活性化)

 一九九〇年、地元病院の売店と食堂に商店街として出店するために、商店街店主たちが梶uアモールトーワ」を設立空き店舗を調理場にした高齢者への給食サービス、学校給食、大型店の清掃委託などへ事業を拡大。徹底した地域貢献姿勢を貫いています。本年七月九日、「Aふらんき」(足立区障害者施設三五の障害者施設が障害種別をこえて連携した作業ネットワーク会)が設立。企業からの受注、自主製品 革細工 キーホルダー手作りパンなどの販売が始まりました。東和銀座商店街は、障害者の取り組みを地域ぐるみで支援するために、空き店舗の無償提供を行なった(東京都の空き店舗対策のチャレンジマート事業を活用)。大田区にとっても空き店舗の一つの問題解決法として、福祉作業所の製品の販売など大きなヒントとなると思う。

(3)墨田区・向島橘銀座商店街 通称 キラキラたちばな商店街 シルバーカードによる地域商店街の活性化

 近隣地域は、狭小過密な住宅が密集し、防災上の問題が大きい。地域と商店主の高齢化、空き店舗、大型店立地により、商店街の停滞が生じていた。平成七年の阪神淡路大震災を機に、青年部がライフカード発行を発案。「シルバー・カード」と組み合わせて高齢者への特別サービスを開始。 六十歳以上の希望する人すべてに発行。 利用者の少ない午後一時から三時までの間にゆったりと買い物をしてもらい、加盟店が創意工夫を擬らした独自のサービスが提供される。墨田区の「顧客拡大支援事業」の補助(三年間各百万円補助率二分の一)を利用して実施している。シルバーカードの表側は、会員の顔写真、氏名、住所、電話番号が記入されており、商店街として、イベントの際のダイレクトメールほか、顧客管理に活用できる。裏側はライフカードで、生年月日、血液型、緊急時の連絡先、係り付け病院名、健康保険証番号、地域老人会名が記入でき、緊急時に対応できる。高齢者が安心して暮らせる地域づくりは、福祉の危機の解決につながると同時に、消費の刺激を通じて商店街や地域産業の活性化に貢献しています。他にもリサイクルまちづくりから全国商店街ネットワークへと展開している。新宿早稲田商店街、戸越銀座商店街、ポイントカードの烏山商店街、アーケドで有名な武蔵小山商店街などなど、元気で個性的な商店街はまだまだたくさん有ります。これらの商店街を見て感じた事は、何となく出来あがった商店街は一つもなく、街を歩くだけで熱い情熱が伝わって来るという事です。特に、キラキラたちばな商店街の理事長にお話しを伺った時は、その迫力に圧倒されました。大田区の商店街と比べた時、立地体力など大田区の商店街の方がかえって優れているように思いました。必要なのは、あと半歩 あと一歩の勇気と確実な行動力なのです。

 質問します。

一、 本年一定の区長挨拶の中で、平成一二年度からは、工業に加え小売業の動向についても、その景気動向を四半期ごとに調査し、情報の提供をしてまいります。」と述べられ、大変分りやすいA3二つ折りの小売業も含めた「大田区の景況」が発行されました。平成一二年七月から九月期の二ページ目を見てみますと、調査員のコメント

<小売業>

・夏物バーゲンを行なったが、前年に及ばなかった。
・紳士服から十代を中心とした、商品に切り替えている
・コンビニと対抗すべく焼肉、餃子の販売を始めた。
・近隣の事業所で残業が増えていて、夜食の仕出しが増加してきている。
・同業他社との競争激化、新メニューの開発により売上げ維持
・家電製品の売上げは、横ばい修理工事に力を入れている

など、ペラペラの一枚の紙の中に私が見ても重大な、リアルタイムの商売のヒントが隠されており、行政としては珍しく優れた定期報告書だと思います。しかし、多くの商店関係者に聞いても誰も見た者がいない。発行されている事すら知られていないのが現実です。

 産業振興部は「大田区の景況」を誰の為に作って、誰に配っているのか?区による情報提供とは、インターネットとか区商連の役員さんとか言う前に、どのようにして「今日稼げなかったら、明日食べられない」必死になって商売をしている人達に、この一枚の「大田区の景況」を、届ける事が出来るのか、言いかえれば情報を一番必要としている、現場の人の手元にどうやって届けるのか?情報という物の重要性をわかっている人は、まだ救われる。わかっていない人にどう重要性を伝えるのかが情報という問題の最大の課題だと思います。お答え頂きたいと思います。

二、 産業振興課の木村部長 内田課長は、大田区中の商店会のイベントにほとんど顔を出し、挨拶では「皆さんが自分達で解決するしか道はない」など本音でぶつかっておられ渋い顔をしている人もいますが、特に商店街の若手には好評です。言わば、大田区商業の最前線に出て商人の生の声を直接聞いておられる、木村部長に大森・蒲田の中心市街地活性化法等と言う、話し以外で本音の部分で大田区の商業振興。私が只今申し述べさせて頂いた事を基に、将来ではなく今何をするべきかをお話し願いたいと思います。

三、 今年六月二十日の日経新聞などに、中野区商店連合会でインターネット商店会新設という記事が大々的に出ていたが、これからは商店も、ある部分はIT化に向けて行動を起こす必要がある。IT化をしないと生き残れない時代がくると考えますが、産業振興課の考えをお聞かせ願いたいと思います。

四、 経営者の意識改革について先日中小企業家同友会主催の講演会で、大田区在住「日本、陽は必ず昇る」等の著者で、テレビで大活躍されている唐津一先生の話しをうかがいました。私も含め会場に居たすべての人達は、先生に元気とやる気とそしてなによりも勇気を与えられました。やり方によっては、俺も何とかなるんじゃないか、こんな機会がもっと欲しいものだ、と思いました。商店の御主人が経営者として、より強い意識を持てるような仕掛け区主催でなければ呼べないようなインパクトある方の定期的で細かい、それこそ仕事着のままでゲタ履きのままで、参加できるような形での講演会 勉強会を、開催することは出来ないものでしょうか、その他の方法を含めてお考えをお聞かせ下さい。とにかく、経営者の意識改革が必要です。

 最後に今回の質問を書くにあたって集めた資料の中に実に、的確で感動的な文章に巡り合う事が出来ました。商業に携わる全ての人の真心が、この言葉に込められていると思います。私の二十世紀最後の質問を次の言葉で締め括らせて頂きます。今まで自分達を育ててくれた「まち」に感謝の気持ちがあれば、そして、次の世代に胸を張ってバトンタッチできる「まち」をつくろうとするなら、われわれはやめてはいけないんです。消えてはいけないんです。元気でなければならないんです。」(早稲田商店会会長 安井潤一郎)

<回答>

一、 調査目的は区内工業、小売業の景気動向を四半期毎に調査し、区内工業者、商業者に景気情報を提供することである。小売業を加えたのは区内産業全体の景気動向を把握するためである。景気動向調査の結果については、報告書とダイジェスト版の2種類を発行している。報告書は都を始め関係機関に、ダイジェスト版については調査に協力いただいた関係事業者へ配布している。商業界に対しては大田区商店街連合会に報告書を送付しており、大田区商連新聞に調査結果を掲載することとなっている。現在、個々の商店主の方々への周知はしていないので、その周知方法を検討してまいりたい。

二、 近年、商業を取り巻く環境は、長引く景気の低迷や規制緩和、大型店の進出、経営者の高齢化や後継者不足、空き店舗の増加など、大変厳しい状況に置かれている。商業振興策の決め手として、まず、経営者自身が厳しい現状を認識し消費者ニーズを反映した経営改善努力することが活性化への第一歩である。商店主自らの努力に裏打ちされた魅力ある個店づくりが、区内商店街の再生につながるものであり、その支援策について検討してまいりたい。

三、 現在、全国でITに対する取り組みが活発に行われていることは認識している。区内商業の活性化に向け、ITの活用も大切な活性化策であると考えられる。ITを活用した支援策については、区内商業の現状を踏まえ、商業者の意見も取り入れながら、検討を進めてまいりたい。

四、 経営者の意識改革を求める一環として、商店の経営者を対象とした講演会や勉強会開催のご提案をいただきました。産業経済部といたしましても、区内商業の活性化は大きな課題となっておりますので、何が効果的な商業振興策をいろいろと模索いたしているところでございます。その中でも、とりわけ経営者の意識改革は最も難しい課題でございます。これまでも定期的な会合の場を活用して、経営者の方々と意見交換を積み重ねて参りましたが、只今のご提案を含めて区としての支援策を検討して参りたいと考えております。