第4回定例議会 代表質問
平成10年11月27日(金)

於 大田区役所 本会議場 

荒木ひでき議員

 21世紀まであと残り2年と数ヶ月になった今日、最も重要な課題だと思われる「高齢者問題」。すなわち「高齢者がいかに元気に暮らしていくか」そして「区が寝たきりの高齢者を作らない、作らせない」ということについて。そして「商工業の活性化」の問題。この2点に的を絞って質問をさせて頂きます。これは、私が直接、区民の方々から聞いた考え、悩み、そういった生の声を、その方々に代わり、述べさせていただきますので、区長をはじめ、行政当局の方々の真心こもった回答を、望むものであります。

福祉問題を問う

〜高齢者問題と大田区の高齢者数の推移について〜

 今の世の中は、残念ながら不幸にして、病気で寝たきりになったり、95歳の親を70歳の子供が面倒を見なければならなかったり、一人暮らしで長く患うなど、大変な苦労をされている方が、数多くおられます。こういう高齢者の方々にお話を伺ったところ「戦争中も戦後も苦労をしたし、いやな思いもした。それでも明日は何とかなるという希望があった。未来は明るかった。だから生きてこれたんだ。だけども今は、明日の夢も希望もない。真っ暗で、今ほど辛いときはない。ただ、死ぬのを待っているだけです」とまでおっしゃる方がいらっしゃいました。戦争体験、復興体験を通じ、一人一人が小説の主人公になるほどの、我々には想像も付かないほどの人生経験をされ、今日の我が国の繁栄を築いてこられた方々に、こんな思いをさせておいて良いものだろうか。今の状態を何とかするのが、我々の役目であり使命なのではないか、と私はつくづく思うのであります。

 大田区においては現在、65歳以上の高齢者が98878人、そのうち元気高齢者が87%で86024人、要介護高齢者は13%、12854人いらっしゃるということであります(平成10年4月資料)。20年後にこの数字はどのように変化するのか、お答え頂きたいと思います。

 

西野区長

 20年後の大田区の高齢者は約13万2千人、うち要介護者を13%前後と計算しますと1万8千人超と推計されます。我々は、このうち約半数位が直接介護を要する方ととらえ、各種の計画の基礎にしています。大田区では、出前型の支援を開始致しましたので、その方向で取り組んでいきたいと思っています。又、ただ単に65歳から要介護だとか、要支援だという認識は持ち合わせておりません。これからの高齢者介護の担い手は、むしろ、高高介助が当然のこととして、考えられていくだろうと認識しています。

 

荒木ひでき議員

〜寝たきり高齢者ゼロの実現を目指して〜

 区長は選挙公報の中で「心豊かな街づくり大田21」として、福祉の充実、産業の振興、文化の向上と発展、事務事業の適性化の推進、とりわけ、特別養護老人ホーム、在宅サービスセンターの建設を掲げられております。今現在の特別養護老人ホームの入所待ちの方は、800人という状況です。現在も下丸子等に建設中ではありますが、超高齢社会が進むのは確実であり、いくら作っても間に合わないというのが本当のところではないでしょうか。そのためにも、出前型在宅福祉サービスを主体にしていくことは大切なことであります。しかしこれからは、問題の本質を、元気に生きていくには、そして、寝たきりにならずにいるにはどうするのかということに中心を置くべきではないかと思うのです。大田区においてもきめ細かなことを行ってはいますが、元気に生きるということが目玉にはなっていないように思われます。この点について他区22区に問い合わせたところ、全ての区から回答を頂き、特筆すべきものとして、世田谷、品川、荒川の3区があげられます。

 特に世田谷区の場合は、区長の公約の中で、3つのゼロ、すなわち、寝たきりゼロ、特別養護老人ホーム待機者ゼロ、保育園待機者ゼロ、ということを掲げ、全区展開で取り組んでいます。注目すべきことは「保健福祉サービス苦情処理委員会」の設置や、「行政が決め、行政が行う」から、区民が主体的に決め、行政との協働により問題を解決していく本来のあるべき姿へ変えていく必要がある、との考え方が示された事です。大田区はどうでしょうか。又、品川区では、シルバー成人式や、ファッションショーといったユニークな取組みもありました。

 荒川区では「寝たきりゼロの10ヶ条」というのがございます(別表参照)。

この10ヶ条を守ることが、最良の方法なのではないかと私は考えます。これは現在高齢の方だけではなく、次世代高齢者に対して徹底してこそ、はじめて有効になるのです。 又、この10ヶ条を全部行っていく場合に、行政と民間ボランティア団体との協力体制を作る必要があると思われます。当面、どのようにし、先々どのようにしていくのか、大田区「ねたきりゼロ」のビジョンを確立して欲しいと思います。現状及び今後の展開について、お答え頂きたいと思います。

 寝たきりを作る原因について専門家に話を伺ったところ、

◎ 身体的要因による病気(脳卒中、骨折、リュウマチ、老化など)

◎ 心理的要因(意欲)による社会的役割の喪失

◎ 環境要因による家及び家の周囲の環境(坂、階段、車)

の3つの要因の相乗作用として家に閉じこもりがちになり、身体や精神機能を使わないために廃用症候群という状態になり、それが寝たきりを引き起こすそうです。

以前、NHKの「天うらら」の中で、池内淳子さんが、原日出子さんふんする娘に無理矢理立たされ、歩かされ、機能回復していくシーンがありました。その時、原日出子さんが「私がお母さんを寝たきりには絶対させない」「目を離さず、手を出さず」だと宣言する感動的なせりふがありました。すなわち「寝たきり高齢者を作らない。作らせない」なのであります。大田区としても、このような内容をいかにしてアピールしていくか、具体的に考えていただきたいと思います。65歳になってから急にはじめたのでは遅いのです。そこで、元気な若い、次世代高齢者に対する働きかけをどこのポジションでやるのか。65歳にならない元気な高齢者や精神病や難病の人はどうするのかについて、お答え願います。

 

西野区長

〜苦情処理窓口について〜

 苦情処理を含めた保健福祉サービスの相談は、本庁舎及び各保健福祉センターで受付けております。取扱上、問題があるというご指摘に関しては、十分検討させて頂きたいと思います。

〜寝たきり高齢者ゼロを目指して〜

 大田区における高齢者福祉のあらましを、各高齢者世帯に配送していますが、その中に、厚生省の定めた寝たきり老人ゼロ作戦の10箇条というのを記載しております。大田区版を作れという話については、研究させていただきたいと思います。

 又、寝たきり防止のためには、区内に150余りある老人クラブの活動に、十二分に期待を持っております。大田区としても、連合会組織を通じて、色々なイベントを組んで頂いております。1週間にわたって開催される民謡大会。かつて、その際の挨拶の中で「生き生き ポックリで参りましょう」なんてお話を申し上げたところ、会場の高齢者の方から、大きな拍手を頂いたことがある。というのは、願いはむしろ、人様に迷惑をかけないで自分の自立した生活を堪能したい、という思いの現れではないかと考えております。老人クラブをイキイキと活動できる場と考え、友達作り、友達支援、そういう立場で、これからも支援して参りたいと考えております。

 現状で介護を要する方につきましては、4つの保健福祉センターを中心に、出前型で在宅サービスを行っております。寝たきりゼロに向けて、既に寝てしまった人にも何とか立ち上がっていただけないだろうか。こういう願いを込めた重要施策の1つとして位置づけているつもりです。寝たきりの原因である「閉じこもり」というのは、孤独の問題でもあると思います。友人や地縁者が周りにどれだけいるかが、高齢になったとき、自分の生活をより豊かにするかしないかということにつながっていくと思います。そして、寝たきりになったときでも、自分で何とかしたい、そういう気持ちを引き起こすような意識、動機づけが大切ではないかと考えております。

 介護を必要としない元気高齢者に対する保健サービスについては、保健福祉課が窓口になっております。老人福祉法の在宅サービス事業の一つに、サテライト方式があります。これは、地域にある既存の公衆浴場や老人いこいの家などを利用しながら、寝たきり予防のため、ひきこもりがちなお年寄りに地域参加を呼びかけていく、ということでございます。しかし実際には、なかなかお出かけにならない方が多い。どうやったら足を向けていただけるか、というのが我々の課題です。いずれにせよ、ボランティアや地域住民の方々の協力なしでは、地域で支えていくということはできません。今後とも、地域に根ざした高齢者の支援を進めていくと共に、寝たきり高齢者を作らない為に、地域福祉保健計画の重点項目として取り上げていきたいと思います。

 

荒木ひでき議員

〜心身障害者の就労問題について〜

 心身障害者の皆様の親なき後の生活の問題、自立の為の就労問題も、大きな課題ではないかと考えます。本庁舎一階の喫茶店「コスモ」で働く方々の活き活きとした働きぶりは素晴らしく、まさに、大田区の心身障害者の皆様に対する取組の大きな成果だと常々思っております。しかし残念なことに、今年12月オープンの「アプリコ」には自動販売機を置くのみで、身障者の方がカフェテリア等の運営に参加する機会を得られませんでした。区自らが区内施設に「コスモ」のような、身障者の方々の活躍できる場を率先して1つでも多く展開していけば、多くの方々に希望を与え、民間企業の模範となることができるはずです。是非、1つでも多くの「コスモ」の様な所を作って頂きたいと思います。

 

西野区長

 アプリコの場合、興行などの客を対象にしているため、検討の結果、今回は見送りました。今後とも、就労の場については積極的に時を得て、場所を得て検討をし、実現をしていきたいと思っております。

 

 

産業振興について問う

荒木ひでき議員

〜中小企業都市サミット・R&D工業展について〜

 次に、産業振興についてお尋ねします。

 先日、中小企業都市サミットが開催されました。私も大変興味があり、見学させて頂きました。その会場で配付された出展者ガイドブックの区長の挨拶で、

「企業の方々にとりましては、今日の産業構造の大きな変化にいかに適応していくかが、今後の課題と思われます。その課題を克服し、より強い工業者となるためには、研究・開発型企業への脱皮が重要な方策の1つと考えられます。当フェアがその一助となれば幸いです。また、今回は、当フェア開催前日の19日から20日に当会場において「第2回中小企業都市サミット」が開催されます。中小企業都市サミット参加10都市の優れた製品・技術などの展示もあり、まさに技術の競演の場といえます」

 となっておりますが、私の見るところでは、技術の競演の場と言うには、今1つ、出展者にその意図が伝わりきれていないのではないかと思えてなりません。産学交流と言いますが、どのようなことができるのでしょうか。会場に展示されていたレースカーには、それを制作した工業高校と自動車部の名が書かれていましたが、なぜもう1歩踏み込んで、生徒や企業の思いを伝えてあげられないのか、大変残念に思いました。

 又、中小企業都市サミットとの連携が今1つという感じが致しました。今後に期待します。今まで述べさせて頂いたことはあくまでも私の感想ですので、この企画全体の成果及び問題点と今後のビジョン、中小企業サミットの成果を、是非、お聞かせ下さい。

 

西野区長

 今回のサミット及び工業展については、新製品が出展されなかったこともあって、技術競演の場というにはちょっと寂しかったかなと、私も思います。今後とも、区内の技術の集積、新製品の開発をスムーズに進めていけるよう、取り組んでいきたいと思います。

 学校の出展については、ストックされた実用新案などをアピールする場として提供したのですが、ここが本当に適切な場だったのかと考えます。産学交流の場は別途にもありますので、内容的なものはそちらで互いに詳細を把握し、活路を見いだしていけるものと考えております。

 全体の成果と問題点について、直ちにあの場で一定の成果がこのように表れたと言うことはなかなか難しいと思いますが、研究、開発型企業への展開を図るきっかけ作りとしての役割は果たしたものと考えております。サミットにつきましても、各都市の工業についての現状、課題、各自治体の取組など、私どもも承知することができましたので、今後の取組に役立てていけるものと考えております。

 

荒木ひでき議員

〜「自立型企業への体質改善」に向けた区独自の融資システムの構築について〜

 私が参加をしている異業種交流会で、常々、話題になっていることの1つに、「自立型企業への体質改善」があります。中小企業の場合、特に下請け体質を改め、自立型にしなければ生き残れないのは、皆わかっています。そして、特に物づくりに携わっている方々は、あふれるほどのアイデアをもち、それを形にする技術も持っているのです。アイデアもあり、理論的な裏付けや技術もあるのに、なぜそれが生かせないのか、いつも、そこにたどり着いてしまいます。研究開発の時間が毎日の仕事に追われてしまってとれない。試作品が出来ても販路がない。結局、自分で持って、回って売ってくるしかないのです。製品化するためには、コーディネイトしなければならないのに、技術専門の人には、残念ながらその力がありません。それを解決するには、どうすればよいのでしょうか。答えは1つです。結局は「お金」なのです。区長の公約の中にある「産業の育成」とは、大田区の産業を担う個々の体力をいかにつけるのかが本質だと思うのです。

 異業種交流会で親交のある八百八町グループの石井誠二社長が、中小企業育成の為に個人の余剰資金を地元企業に直接融資する方法を考えておられました。それはまず、地域のお金は、地元へというコンセプトから、大田区で独自に信用保証システムを作り、地元でお金を持ち、活用したいと思っている人のお金を区が保証して、地元でお金を必要とし、活用できる人にそのお金を貸す。その決済は、地元信用金庫で行う。この方法の利点は、地元企業にとっては資金を得ることが出来、新製品の開発がやりやすくなり、ベンチャーが育ち、眠っている余剰資金が活用され、大田区には保証料という収入源が出来るなどといった、全てうまくいく方法であると思います。これを明日からやれという言うのは無理でしょうし、無担保低利が原則なので、当然不良債権をどうするか等といった問題はありますが、このような方法もあるということで、提案したいと思います。この様に、中小企業家の中には必死に物事を考えている方もおられます。八方ふさがりの状況の中、区独自の金融システムが構築できないものだろうか、お尋ねします。

 

西野区長

公的な力で保証まで踏み込むと色々な問題が派生するのも事実で、区として、直ちにそういうことに手を染めることは致しかねると思います。しかしそれが、ベンチャーを育てるものであるということは十分承知しているつもりでございます。

 今回、政府の補正予算にも、ベンチャーの育成が大きな課題の1つになっており、これらの成り行きを見守ると共に、区市町村としての取組をいかに進めていったらいいのか、私なりに研究して参りたいと考えます。

 

荒木ひでき議員

〜「後継者の育成」問題について〜

 産業育成の上でもう1つの重要な問題に「後継者の育成」があります。特に商業における後継者の問題は切実なものがあります。商店街の基本部分を支え、元気に活動してきた青年会組織でさえ存続させることが出来なくなってきたのが現状であり、後継者が育っていく土壌がどんどん失われてしまうようで、私はとても心配でなりません。商業においても工業においても、事業が繁栄するのもしないのも、事業者個々の実力であることは十二分にわかっておりますが、行政として、立ち直るテコ入れを、きっかけづくりをしていただきたいと、切に思う次第です。工業サミットだけでなく、行政が援助して、商業サミットを行うとか、二代目育成資金を低利で貸付ける等といった方法が考えられますが、行政としての見解をお答え願います。

 

西野区長

工業、商業全てに言えることですが、経営者自身が理想を掲げながら、この仕事ということで頑張っていただく。そして、その姿を見て子供達も後追いするのではないかと考えます。そのうえで、彼らが生業としてその問題に取り組む環境条件をどのように作り出していくか。行政の問題としても、十分に取り組んでいきたいと思います。

 

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