平成11年6月11日 一般質問
本会議場にて (所要時間20分)

〜 ホームレス猫について 〜

荒木 秀樹                                              私は平成九年十月十五日の決算特別委員会、平成十年二月十八日の本会議での代表質問で、ホームレス猫の問題を、大田区議会で、はじめて取り上げて参りました。そして、いろいろな御意見を頂きました。「人間様の問題」の方が先だろうと、真剣に意見をされたこともありました。どうやら「教育問題」としてホームレス猫の問題をとらえているのだという私の真意を理解していただけないようでした。私の家には生まれた時から幸せいっぱい、殿様育ちのチビという名前のネコと、生まれた時から人間にいじめ抜かれ、体中傷だらけで近所の子供に拾われ、その子供に涙顔で「このネコなんとかして、議員さんなんでしょ」と差し出され、それが不憫で情がうつり、里親を捜すよりも、私が飼うことになってしまった、前ホームレスネコの「モモエ」と言う二匹のネコがいます。このネコ達は私の事務所の招き猫と呼ばれ通行の人にも名前を覚えていただき皆様の人気者です。しかしその反面ぱったり事務所にこられなくなった人も何人かいます。その理由はネコが嫌い、ついでに私も嫌いになったそうです。一人や二人ではありません。ホームレス猫の問題に対して、あくまでも人間はネコを好きなのだ、と言う立場を取っていた私には大ショックです。これは感性の問題であり「あなたはなぜネコが嫌いなのか?」と討論する問題ではないし、私自身、ペットの問題を取り上げることの難しさを充分に認識いたしました。その点をふまえた上で今年の三月三十日に、ホームレス猫の問題に真剣に取り組んでいらっしゃる大田区在住の方々六人を区役所にお呼びをして、いわば「第一回ネコチャン会議」を開かせて頂きました。行政にも参加を呼びかけましたが、残念ながら忙しいという理由で参加していただけませんでした。その時の討論内容をもとに質問をさせていただきます。

一、「国の動き」今やペット全盛の時代。総理府の調査では国民の三割以上が犬、猫等の動物を飼育していますが、その反面、虐待や遺棄、劣悪飼育も増大し、社会問題化しています。動物虐待は、自分以外の生命への思いやりや理解の欠如であり、弱いものいじめに結びつき、社会を荒廃させる一因となっています。現行の「動物の保護及び管理に関する法律」は制定から二十五年間改正されることなく、現在の様々な問題に対処できない状態になっています。動物への思いやりのある心豊かな社会の実現を願い、この法律をより実効力のあるものにしようと言う観点から動物保護法の改正が国会でも、議論されようとしております。

二、「東京都の動き」猫の適正飼育と動物取り扱い業者の指導育成について、昨年七月の都知事の諮問を受けて審議してきた東京都動物保護管理審議会(審議会の構成委員は十八名で関係団体、都民代表、専門家、都議会議員で構成されています。) がこのほど答を出しました。 飼い猫については、一、屋内飼育 二、不妊去勢手術の実施 三、首輪などによる身元表示、を推進するとし、小笠原村で義務付けられているような飼い猫登録制などは見送られました。 一方、「都内の猫百十六万匹のうち一割とされる野良猫については、地域から排除するのではなく、人との共存を目指し、住民主導でえさのやり方などにルールを作るべきである」としています。都衛生局獣医衛生課は、そうした取り組みを行うモデル地域をサポートしていく考えです。飼い猫の室内飼育と不妊去勢手術が進めば、野良猫も減少するとみられます。 またペットショップ、ブリーダーなど動物取り扱い業については、現在の条例で定める届け出制ではなく、審査のうえで許可する登録制を導入すべき、などとしています。

三、「他区の動き」 横浜市磯子区(人口十六万九千四十二人)ホームレス猫防止対策事業について、横浜市磯子区長 宇野公博氏の挨拶文を引用させて頂きます。        今まで「野良猫問題」を行政が積極的に取り上げたところがあったでしょうか。猫については法律での規制が曖昧で、あくまで個人の常識に任されており、行政としてはその対応に苦慮し続けています。しかし、現実では野良猫の数が増えるとともに糞、尿、鳴き声、器物破損等の苦情も発生し、猫の好きな人と猫の嫌いな人との間でトラブルが起こり、猫の問題から人間関係の不和を招いてますます複雑な問題になっております。磯子区としては、「猫の問題は、個人の問題であるとともに地域の問題である。」との考えから「人と猫が共生できる街づくり」をスローガンに、全国でも例のない「ホームレス猫防止対策事業」をスタートさせ、野良猫問題の解決を目指しています。今回開催された「区民と考える猫問題シンポジウム」(通称ニャンポジウム)もその一つであります。どうか今回のシンポジウムの議事内容を御覧になり、生活環境も違う、認識も違う、いろいろな立場の人がいることを知るとともに「猫の問題を生活していく地域みんなの問題」として位置付けて、みんなで解決していく風潮になっていただきたいと思います。そのために、行政も地域に任せるのではなく一緒になって協力、調整、支援等努力して参ります。 今後も磯子区民の皆さんのご理解とご協力をお願い致します。また東京二十三区のなかで、はじめてホームレス猫の避妊手術にたいし、援助をおこなった文京区、新しい条例を作った埼玉県等の報告がされました、社会の認識そのものが、「野良猫を排除するのではなく、共存する道を探る」という風潮に大きく動き出している中で、平成十一年二月二十日付け大田区報に 「減らしたい、かわいそうな野良猫」と言う見出しで野良猫にえさを与える人がいます。猫をかわいそうに思う気持ちは大切です。しかし、その行為は逆にかわいそうな猫をさらに増やし、住宅の密集する都会では、ふんやえさの食べ残しなどさまざまな問題を引き起こしています。軽い気持ちでえさをあげる前に、そのことを考えて下さい。 区は、野良猫を増やさないために飼い猫の去勢、不妊手術料金の一部を助成しています。とまさに、今の時代の流れに逆行すると、受け止められてもしかたのない文章を載せています。エサをやりさえしなければ寄りつかなくなると言いますが、彼らも生きていくためにはどこかで生ゴミをあさったり、人間からエサをもらわなければ飢えや病気で死んでしまいます。一生懸命に生きようとしている彼らに手を差し延べることは決して悪いことではありませんし、彼らにも生きる権利はあるはずです。それに比べて、同じ問題に対する磯子区の文章を載せさせていただきます。野良猫にエサを与えているあなたへ 野良猫にエサを与えているあなた。その気持ちはわかります。しかし、エサのたくさんある所にねこ達は集まり、子猫が生まれてしまったり、エサ場を汚したりして近所の人達に迷惑をかけ、結果的に 「ねこ嫌い」を増やしています。 エサを与えているあなたが 愛情と同じだけの責任をもってねこ達に接してください

一、不幸な子猫をうませないために、「不妊、去勢手術」を行いましょう。
二、エサ場は自分の敷地内とし、常に清掃を心がけ清潔にしましょう。 
三、エサ場には猫用のトイレ(砂場等)を設置し、速やかに始末しましょう。
四、他人の土地や公園等のフンも、エサを与えた結果として片付けましょう。
五、保健所で手続きをし、飼い主として首輪とペンダントを装着しましょう。
六、近所の人達と十分にコミュニケーションをとりましょう。
以上六点をすべて守り、飼い猫として責任を持って飼育しましょう。猫達と人間が共生できる地域作りをめざしましょう。 

磯子区保健衛生課

ホームレス猫に対する磯子区の真摯な取組は、今や全国の耳目を集める所となっています。それでは質問に入らせて頂きます。

質問一  大田区報と磯子区の考え方の温度差がどこにあるのか疑問です。真意をお聞かせ下さい。
質問二  磯子区では猫の飼育ガイドライン作成に三年かかったそうです。大田区では獣医師さんを、交えた区民と行政によるホームレス猫のシンポジュームを開く可能性があるか又、住民の盛り上がりでこの問題が浮上してきた場合はどうかお答え下さい。
質問三  私が前から提案している、ホームレス猫の不妊、去勢手術に対する助成金の考えはどうか? また里親捜しに対する行政の協力はどうかお答え下さい。
質問四  住宅事情等により、小動物に接する機会の持てない子供達の為に、動物の飼いかた、触り方を、教える事のできる、触れ合いの場を、色々な機会を使い積極的に、計画してはどうか? 提案をいたします。
                                          以上 四点であります。

 ちょうどこの質問原稿を書いている、六月八日お昼頃山王三丁目で子猫が、幅約一メートル、深さ五メートルの古井戸に落ちてしまうという、事故が発生し住民の皆様の要請に答え、大森消防署、消防隊、レスキュー隊員が出場をしてくださり、捨て猫防止会、住民の皆様との見事なれんけいプレーで、助け出すというテレビのドキュメントの様な感動の救出劇がありました。私も協力させて頂き、大変勉強になりました。

 すなわち「蟻でも、金魚でも、鳥でも、猫でも、どんなに小さな物にでも命があるのだ、命を粗末にしてはならないのだ」と 言う事の具体化であり、この事に参加した人、話を聞いた大人、また子供達に対し、大きな問題提起になったと、確信します。     

答弁 (保健福祉部長)

ただ今のご質問に順を追って答えさせていただきます。磯子区との考え方の問題ですけれども、大田区におきましても、ご質問にありましたように野良猫の数が増えてくることに伴いまして、トラブルの発生あるいは人間関係の不和を招いてる、あるいは、糞、尿等で被害にあっている区民の方がどうしたらよいかという、問い合わせが年間を通して寄せられております。ご質問にありました、磯子区のシンポジウムの開催、また、それらの公報誌の掲載等については、お聞かせいただきましたが、基本的な考え方いわゆるかわいそうな野良猫をできるだけ増やさないようにという点については、大きな差はないものと考えております。

 大田区といたしましては、少しでも野良猫が増えることがないように、飼猫の去勢・不妊手術の費用の助成を積極的に進めていきたいと考えております。こういった「地域猫」というような取り組みも野良猫対策に対する、ひとつの方法とは思いますが、他地域での動向も参考にしながら今後、野良猫に対してどのように対応していったらよいか研究させていただきたいと思っております。

 また、シンポジウム等の開催の問題でございますが、ご質問にありましたようにこういった猫に対する考えにつきましては、それぞれ区民の方々でも千差万別ではないかと思われます。

 特にお伺いする相談内容にとっては、かなり深刻なものもあって苦情、意見、要望等かなり厳しいものも聞いております。こういう状況でございますので現段階におきまして大田区としてシンポジウムを開催することにつきましては、さらに経緯をみさしていただきたいと考えているところでございます。

 やはり、住民の気運がこういったシンポジウムの開催問題として浮上してきた場合どうするかという点ではございますけれども、そういう背景としての広がりとその動向を肥握して適切に対応してまいりたいということで考えております。

 それから、従来からのご提案のホームレス猫に対する不妊・去勢手術に対する助成金ということ、または、里親探しという点につきましては、様々な区民の方のお考えもあり、かなりこういった猫に対する厳しいご意見のかたもおります。

 そういったなかで区としても、野良猫も好きで野良猫になったわけでもなく、飼い主から捨てられたためこのような事情になった事例が多いと判断しておりますけど、そういった点でむやみに捕獲したり、処分するとこれはかならずしも真意ではありませんがそういった点で野良猫が寄り付かないような方法をご案内しているというところでございます。

 また、大田区としましては、先程からも申し上げておりますが捨て猫を防ぎ、少しでも野良猫を増やさないために、飼猫の去勢・避妊手術を希望する飼い主のかたたちに費用を助成していくということをやっておりますので、このことがもっとも効果が大きいのかなあという判断をして今後もこの方針をすすめてまいりたいというところで考えております。

 次に猫の里親探しにつきましては、常に区民の方々からお問い合わせがいくつかくることがございます。その際には、城南島にある東京都の動物保護相談センターを紹介しております。

 大田区としてもこういった点で飼い主がみつかることによって救われるということでありがたいとことだと考えております。子供達が動物にふれあう機会という点でございますけども、ふれあいの場といたしましては、毎年、平和の森公園で開催されています「大田フェスタ」のなかで普段、見ることが出来ない様々な小動物を連れてまいりまして子供達に触れさせるようなそのような機会をつくって楽しんでいただいているところでございます。

 また、大田区内の保育園、小学校等の一部でも小動物を飼育しておりますが、新たに場所を確保して常設的に運営していくことは難しいと考えております。

 

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