防災問題

神戸視察報告   荒木 ひでき

 8月2日・3日の2日間、防災対策特別委員会での神戸視察がございました。私にとりましては、発災9日目の平成7年1月26日以来、3度目の神戸視察となりました。特に今回は芦屋市の「震災復興土地区画整理事業」について勉強して参りました。平成8年3月に住民の手により「芦屋西部地区まち再興協議会」が発足し、一年余りにわたる検討が積み重ねられ、平成9年8月に『まち再興計画案』が芦屋市に提出されたとのことでした。住民と行政との徹底的な話し合いによる「まちづくり」は大いに学ぶところがあり、大田区の今抱えている「まちづくり協議会」の有り様など再考させられるものがありました。

 また、今回の視察で1番の収穫は2日目に阪神・淡路復興支援館フェニックス・プラザに行けたことです。震災後の生活体験と復興に関する各種情報を幅広く発信することを目的とし、地震により被災された方々に対する生活再建に向けての各種支援情報を始め、被災者支援グループの交流や学習の拠点となる施設です。震災の記録、震災復興計画なども展示されていて、地震の怖さ、復興の難しさがひと目で認識できる場所になっております。

 さて、大田区民世論調査によれば、防災に対する関心が、平成9、10年にはやや弱まったという調査結果がありますが、これは震災に対する意識がやや風化しているのではないかと心配しております。私の場合は芦屋市の震災復興土地計画地域の中で船舶用コンテナを上にふたつ積み上げ、元気に商売をなさっていた花屋さんの素晴らしい根性を目の当たりにした時、全ての風化した心は消し飛びました。

 先日、9月1日には、大田区総合防災訓練が行われました。今年は、従来の防災訓練の方法を改め、阪神・淡路大震災で地域住民の初動行動が多くの人命を救助し、火災の抑制に最大の貢献をなした教訓を踏まえて、生活に密着した家庭内の安全確認や近隣との協力を中心とした、新たな形の防災訓練が行れました。

 防災意識は常に緊張感との戦いであります。大田区の防災問題について、今以上に真摯な態度で取り組んでいこうと私自身決意を新たにいたしております。ご理解、ご協力の程、お願い申し上げます。

 

第3回定例議会 代表質問

平成11年9月22日(水)

(防災問題)

荒木ひでき議員

(総合防災訓練) 総合防災訓練について、成果と今後の問題点をお答え下さい。

 

西野大田区長

今年の総合防災訓練、これは少し模様替えを致しまして、身近な所から発災時の行動をどのように汲み上げていくか、自らの身の安全を守る家庭内防災、隣近所が共同して行う初動行動訓練といった実践から入っていただき、皆さん自身に考えていただき、行動してもらう。それを消防なり警察なり区役所といった防災関係機関がサポートしていく。このような取組を致しました。

9月16日には検討会を行い、町会や市民消防組織の皆さん方から、非常に参考になったと評価を頂戴いたしました。今後も、より身近な問題として、どのような行動をとったらよいのか、そういうことを中心に防災訓練に取り組んで参りたいと考えております。

 

荒木ひでき議員

(8月29日の大雨について) 8月29日夜8時過ぎ、東京を襲った記録的な大雨は、大田区にも区内656ヶ所の浸水という記録的な被害をもたらしました。私は地域の余りのひどさに入新井、馬込、新井宿地区を29日当日にくまなく見廻ってまいりました。すると、品川区との区境である東馬込では、午後10時40分頃「品川区災害対策巡回車」と大きく車体に表示し点滅灯をつけた車が停まり、赤い作業服を着た品川区職員が忙しく走り回っていました。被災された品川区民の方々は間違いなく「行政は確かにここに来ている」という安堵感と信頼感にあふれた気持ちになったのは間違いのないことでしょう。一方、大田区側でも、自主的に出動した出張所の職員が数名、水の掻き出し、荷物運び、また情報収集と必死に働いておられました。しかし、その動きはあくまでも組織的なものではありませんでした。

さらに、区民の方々に「区役所にいくら電話しても通じない」と言われたので、大田区役所に電話をしたところ、「本日はお休みでございます」というテープが繰り返されました。一方、品川区役所に電話をしたところ、水防本部につながりました。

翌30日からの浸水家屋をめぐる大田区職員の一生懸命さが印象的であったものの、他区のリアルタイムな動きを調べるにつれ、「これでいいのか、大田区は」という気持ちになってきました。各区、雨の降り方も違いますし、中小河川の有る無しなど均一的には考えられないところもありますが、8月29日に被害のあった主な区の被害状況と対応を問い合わたところ、水防本部を設置した区が7区、情報連絡体制を採った区が2区、また住民からの電話の対応は2区を除いてほとんど肉声で対応できる態勢を敷いたそうです。港区では、普段から、区の管理職が毎日交代で役所に泊り込み、有事に備えているそうです。それに対し大田区の人員配置は土木部が19時15分、警報発令時点で土木課が2名、防災課が2名、20時20分に土木課11名、防災課6名で対応していたそうです。

 29日11時30分現在で区が把握した浸水家屋が20件、しかし実際には馬込、入新井、新井宿、池上を中心に656件もあり、倒壊した石塀の撤去作業、冠水箇所でポンプを使った排水作業を、地元消防団や山王三・四丁目防災協力隊などの自主的な出動により行っていたのです。まさに住民独自のパワーです。しかし、余りにも数字の隔たりがありすぎるのではないか。これがもし大規模災害であったなら想像するだけで恐ろしくなる。私が前々から訴えているように、災害時では最も大切だと思われる情報収集について、行政だけではなく区民参加型の情報収集システムを構築していくべきではないか。区民の皆様が災害に遭われた場合、連絡しようとする所は警察、消防、区役所かと思う。その時にテープによる無機質な対応ではなく肉声による情報の受発信といった区民対応こそが、行政による心の通う区民サービスそのものではないか。

 また、今回、理由はあるにしろ、水防本部を緊急にたち上げなかったのはなぜか。今回のような大雨が、金曜日の夜に起こっていたら、行政としてどのような体制をとるのか。

災害の抜本的な解決策としての馬込幹線の完成など、ハード面での対応はどうなっているのか。対処療法的な解決ばかりで雨に弱い地区に住む人たちはいつまでたっても雨対策に恐々としていなければならない。都市計画とからめ明確な日時を交えてお答えください。

 「都市型水害」に対しては、行政の力だけでなく区民の方々の十分な備えの必要性の認識を徹底すべきではないか。住民の皆様にも自己防衛して頂くという意識を培っていかなければならないのではないか。住民の自助努力の意識を高めるために区としてはどのような指針をお持ちか。

被災の翌日の対応で、品川区では「平成11年8月29日の集中豪雨で被災された方へのお知らせ」とするビラを各家庭に配布し、各掲示板に掲示した。ここには、税金や保険料の減免や資金の貸付け、さらには、「お子様が区立小中学校で使用している教科書や副読本に被害があったご家庭はご相談下さい」とある。ここまで木目細かい区民への配慮があるからこそ、安心して生活できるという行政との信頼関係が育っていくのではないか。特に品川区西大井5丁目辺りは道路を隔てるとすぐに東馬込にあたる。貼ってあるこの手厚いビラをみて、大田区議会議員として忸怩たる思いを感じずにいられませんでした。

 我が大田区でも被災翌日からは各出張所職員が一生懸命に対応し、清掃事務所職員の素早く力強い行動は、住民の皆様の高い評価を得ていました。しかし、生活支援にかかわる情報提供等、具体的な配慮がなされておらず、せめて品川区のようなビラが一枚あれば行政と区民との結びつき・信頼関係がさらに深まったのではないでしょうか。

今回の品川区役所防災課の方々の、被災当日と直後の対応に非常に感銘を受け、我が大田区の防災問題について今以上に真摯な態度で取り組んでいこうと私自身決意を新たに致しております。

 

西野大田区長

大田区を襲った局地的な集中豪雨に対し、適切な対応が必ずしもとれなかった。そのためにいろいろとご迷惑をかけた点については深くお詫び申し上げたいと思います。いずれに致しましても私どもとしては、事後の対策に翌日以降、全力を挙げて取り組み、また、その後の検討の結果をふまえ、改善すべき点を今、整理している最中でございます。被害に遭われた皆さんにはご迷惑をかけたことをお詫び申し上げます。

 8月29日18時55分、都内23区に大雨洪水警報が発令され、直ちに水防体制に入り、気象情報、浸水状況などに関する情報収集には努めました。しかし、降雨が短時間で止んだこと、短時間で警報が解除されたこと、夜間で的確な状況が把握できずに、水防本部を設置するところまで至りませんでした。大変申し訳ないと思います。

 又、災害が発生した場合の対応については、勤務時間内外を問わず、万全の体制をとる。風水害に対する初動体制については、台風のように予測が可能な場合には各部局対応、休日夜間、短時間に発生したような災害については、区内在住者を中心とした緊急配備体制による職員による概要把握、その後、各部局の役割に基づく被害調査や生活支援の体制をとることなっております。

総合治水対策として、雨水貯流施設や透水桝などの整備を行っている馬込幹線は平成15年度末完成予定であり、東京都に対して、早期完成を強く要望して参りたいと思います。

災害時の情報収集について、区民の方々から積極的に区に対して働きかけをしようとする時に、区の電話が留守番電話であったと、大変申し訳ないことで、これについては、早速、改善方を指示しております。私どもに手落ちがあった点を深く反省し、現在、情報の提供収集のやり方などについて検討して、早急に結論を得たいと考えております。

品川区の適切な情報の提供が信頼を築くんだということでございますが、今後の具体的対応に対して、それらの内容を含んだ区民の方々への周知を図って参りたいと思います。

 

(福祉問題)

荒木ひでき議員

現在、大田区には授産施設として7ヶ所あり、そこで作られている品物はどれをとっても優れた製品ばかりです。しかし、その販売先は他区に多く、区内では販路が確立されていない。そこで何とか自分たちで作ったものを販売するルートを、大田区で確保することはできないものか。本庁舎一階の喫茶店コスモの片隅で、ある程度の製品を販売しているのですが、授産施設で作られたものが必ず手に入る場所を行政主導で設けることで、障害者の雇用促進と福祉行政の進歩に必ずや役立ち、実現すれば、福祉大田区の1つの顔となると思う。その第一歩としてまず身近な所、つまり、本庁舎のロビーの片隅にコーナーを設けていただきたい。区としてのお考えをお聞かせ下さい。

 

西野大田区長

庁舎移転に伴い、授産施設等で作られた製品の販売を、本庁舎のコーヒールームで一時的に取り組みましたが、現在、レイアウトの問題、スペースの制約などがあり、ご指摘の状態でございます。旧庁舎時代にはいろいろな物品販売が行われておりましたが、こちらでは、販売コーナーは設けておりませんが、隣の生活センターでは一部おいております。どのような形で販路を確保するのが良いのか、検討して参りたいと思います。

 馬込幹線は、大田区東馬込・中馬込及び南馬込地域の豪雨時における雨水を取り入れて、一時貯溜し浸水の軽減を図るために、計画された整備幹線です。

施工路線は、都道池上通りと区道臼田坂通りの交差点(旧大田区役所前交差点)から発達し、トンネル(シールド工法)を掘り進みながら臼田坂通り下を通って、南馬込四丁目地先に至る延長約1300mの計画です。

 まず、その一段階として、トンネルを掘り進めていくために、必要な立て穴を作る工事(立坑設置工事)が平成7年3月から始まり、平成15年度末完成を目途に建設を進めております。

 

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